2050年に日本の高齢者が4割になる【人口減少で各業界に起きること】

カインズサービス「メディア事業部」の山田です。

このまま人口が減少していくと日本の未来はどうなるのだろうか?

誰もがこんなことを考えたことがあるのではないでしょうか。

作家・ジャーナリストであり、人口減少対策総合研究所理事長でもある河合 雅司氏の著書「未来の年表 業界大変化瀬戸際の日本で起きること」では、人口減少によって、日本のあらゆる業界で起きる大変化を予測しています。

今回は本書の内容を引用しつつ、これから人口減少が進む日本において起こることを取り上げていきたいと思います。

2050年には日本の消費者の4割が高齢者になる

2050年には日本の消費者の4割が高齢者になる

本書では国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計データをもとに、総人口に占める高齢者率が2050年には40%程度まで上昇すると指摘しています。

高齢者が人口の多くの割合を占めていくことになると、何が起きるのでしょうか。それは消費全体が低下していくことを意味しています。

医療や介護にどれだけ費用がかかるか予想がつかないため、気前よくお金を使うわけにもいかない。

若い頃に比べて消費する量は減り、住宅取得やマイカーの買い替えといった「大きな買い物」の必要性も乏しくなる。

80代にもなれば生活圏は狭くなり、外出率自体が低くなる。

引用元:未来の年表 業界大変化瀬戸際の日本で起きること

高齢になれば、自分の健康への不安が高まっていくので、もしもの時に備えて貯蓄をしておきたいと考えるのは当然でしょうし、若いころのように外食、旅行などの消費活動も少なくなっていくので、消費が落ち込むというのはうなずける話です。

また、日本の勤労世代は2040年までに1400万人ほど減ると言われています。

このまま勤労世代が少なくなっていくと、当然のように働く人が不足するわけですから、GDPにも大きく影響していくことは間違いないでしょう。

労働者が不足する3つの職種とは?

労働者が不足する3つの職種とは?

本書では様々な業界の人手不足に対して、起こることを予測しているのですが、その中で労働者が不足する3つの職種を抜粋して解説していきたいと思います。

取り上げる職種は以下の3つです。

  • 整備士
  • 第一種電気工事士
  • ドライバー

一つずつ解説していきます。

整備士が不足することによって起こる影響

今後は高齢者が多くなり、自動車の保有が進むことで買い替えサイクルが長くなります。

また、自動車の性能が向上したことで、定期的に新車に買い替えるというより、一台を長く乗る人が増えていきます。

そうなると、自動車メンテナンスの需要はこれまで以上に増えていくことが予想されるでしょう。

長く乗るということは、部品の交換が必要となることでもあり、自動車整備の需要はますます増える。

需要が高まりを見せるのに整備する人が足らず、作業が滞ることになれば車離れに拍車をかけよう、整備士の不足は自動車の製造や販売にとって新たな経営上のマイナス要素となりかねないのである。

引用元:未来の年表 業界大変化瀬戸際の日本で起きること

若者の車離れによって、整備士を目指す人が年々少なくなっている現状を考えると、「事故を起こしても車が直らない」といったことも現実的に起きていく可能性があります。

第一種電気工事士が不足することによって起こる影響

経済産業省が公開している資料では、2030年には2万6千人の電気工事士が不足すると言われています。

電気工事士が不足するということは、発電設備や電気設備などの生活インフラが脆弱になるということです。

空調設備業界では配管施行の担い手は高齢化が進んでいる。

このまま電気工事士や配管技能士といった職種の人手不足が続けばエアコンが故障しても、いつ取り替え工事に来てもらえるか分からなくなる。

最近の夏は酷暑続きだけにまさに命取りとなりかねない。

引用元:未来の年表 業界大変化瀬戸際の日本で起きること

もし夏場の猛暑にエアコンが故障して、修理に来てくれる目途が立たなければ、命にかかわる危機にも発展してしまいます。

整備士と同様で、若い人材の電気工事士志望が少なくなったこと。ベテランの電気工事士の定年による一斉退職など。これから電気工事士が減っていく要因は多くあります。

ドライバーが不足することによって起こる影響

「物流クライシス」という言葉をよく聞くようになりました。本書では日本国内のトラック輸送が「破綻の危機」に扮していると指摘しています。

2015年と比較すると、2030年までに約25万人のドライバーが足りなくなると言われています。また、ネット通販の増加がドライバー不足に拍車をかけるような形となっています。

深刻なドライバー不足によって、2030年には10億トン分の荷物が運べなくなるとも言われています。(現在の約3割程度の荷物がユーザーに届かなくなる)

日本の物流は中高年がなんとかやりくりしながら成り立たせているのである。

このままなら老後の生活資金を得るために働き続ける60代後半から70代がドライバーのメイン層となるかもしれない。

引用元:未来の年表 業界大変化瀬戸際の日本で起きること

企業は消費者の期待に応えるために、「必要なときに必要なだけ届けるサービス」を普及させました。

消費者の立場としては助かりますし、とても便利なサービスですが、このままドライバー不足が続くと、「時間指定配送」「当日配送」といったサービスは維持することが難しくなるのではないでしょうか。

これからの鉄道業界に起きること

これからの鉄道業界に起きること

本書では、2040年頃に、通勤・通学定期券客が2割減ると言われています。

その要因は、少子化による通勤・通学者の減少、テレワークの普及、オフィスの空室率の高まり、出張する労働者の減少など、多岐にわたります。

これらの逆風によって、鉄道会社はビジネスモデルの変換を余儀なくされるかもしれません。

本書では、これからの駅(鉄道会社)は生活必需サービスを一元的に受けられる「便利な場所」に生まれ変わるべきだと述べられています。

大都市圏の鉄道会社が人口減少社会において鉄道事業を続けながら、新たな収入を確保しようとするなら、まずは駅の機能を強化することだ。

有望な資産をうまく活用しない手はない。一人暮らしの高齢者が増えるにつれて、行政サービスの窓口や医療機関、福祉施設などが集中した生活必需サービスを一元的に受けられる「便利な場所」へのニーズは大きくなる。

引用元:未来の年表 業界大変化瀬戸際の日本で起きること

駅が電車に乗るだけの場所ではなく、駅全体が一種の商業施設のように、人々のあらゆるニーズを満たすようになる日も、そう遠くない未来に訪れるのかもしれません。

企業は薄利多売から厚利少売へのシフトが必要になる

企業は薄利多売から厚利少売へのシフトが必要になる

鉄道会社だけではなく、様々な企業が縮小していく国内マーケットの中での戦い方の変化を求められています。

本書では、これまでのような「量的拡大モデル」とは決別し、競合とのパイの奪い合いを続けるべきではないと述べられています。

マーケットが縮小する以上、GDPや売上高が減るのは仕方ない。

それをカバーするには製品やサービス一つあたりの収益性を高めることだ。

販売する商品数を少なく抑える分、利益率を大きくして利益を増やすビジネスモデルへのシフトである。

引用元:未来の年表 業界大変化瀬戸際の日本で起きること

利益が少ない商品を大量に売っていくのではなく、利益率の高い商品を限られた人たちに届けるという、「薄利多売」から「厚利少売」へのシフトチェンジが求められているのだと思います。

高くても消費者が買いたくなる商品やサービスを生み出すことが、国内で生き残るためには不可欠になっていくのではないでしょうか。

「よりよいものを、より安く」という価値観はもう限界に来ているのかもしれません。

「戦略的に縮む」という成長モデルへの転換が必須となる

「戦略的に縮む」という成長モデルへの転換が必須となる

国内のあらゆる需要が縮小していく中において、これまでのような「右肩上がりの売上高」だけを追い求めるのには無理があると本書では指摘されています。

今後は、拡大を目指すのではなく、企業体力があるうちに「戦略的に縮む」という成長モデルへ転換できるかが、ポイントになっていくのだと思います。

組織体力があるうちに、「残す事業」と、「やめてしまう事業」を仕分けるのである。

その上で、「残す」と決めた事業に人材も資本も集中させて、これまで以上に組織としての持続力や競争力を向上させることだ。

やめてしまう事業は他社に売却できるものは売却すればいい。

引用元:未来の年表 業界大変化瀬戸際の日本で起きること

企業は追い込まれる前に、戦略的に縮むことで自らの組織をスリム化し、今後どの分野で勝負をしていくのかを、あらためて明確にしていく必要があるのだと思います。

そのためには、自社の商品・サービスに付加価値をつけて、高くてもユーザーに選んでもらえるような「ブランド」を作ることにリソースを割く必要があるのではないでしょうか。

【まとめ】2050年に日本の高齢者が4割になる【人口減少で各業界に起きること】

【まとめ】2050年に日本の高齢者が4割になる【人口減少で各業界に起きること】

今回は人口減少における日本の未来予測をお届けしました。

人口が減少していくことは経済に大きな損害をもたらします。

そして、もっとも深刻なのは人材不足。行政サービス、重要なインフラを支える人材が不足することで、これまで当たり前に守られていた安全・安心は損なわれていきます。

本書では、人口が減少したとしても、経済成長は欠かせないものだと述べられています。

だからこそ、企業は薄利多売から厚利少売へシフトチェンジして、新たな付加価値を生むこと。

戦略的に縮みながら、これまでにない成長モデルを作り上げる必要があるのだと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。